フォーチュンクッキー
「…太一さんはいいの?」

 きょとんと見つめてくる杏ちゃんの言葉に首をかしげた。

「え、だって、太一さんがおいでって……」

 だからみんなで行こうと思ったんだもん。

そんなあたしに、杏ちゃんはアハハとお腹を抱えて笑い出した。


「未来って本当に天然よね~」

 自覚はないけど、あたしはなにか間違えているのかな?

笑い涙を指で拭った杏ちゃんは、何回も頷いてくれた。


「うん、わかったわかった。3人で行こう!」

 ぽんぽんと肩を叩かれ、あたしは大きく頷いた。



 家への帰路と杏ちゃんの塾への道との分かれる交差点につくと、あたしたちは足を止めた。

「じゃあ、杏ちゃんも勉強がんばってね」

「未来もでしょう?」

 たしなめるように笑う杏ちゃんは、やっぱりしっかり者で、ついつい甘えたくなるんだよね。

手を振ろうとしたけれど、杏ちゃんが「あっ」と振り向いてきた。



「…ところで、雛太とはもう大丈夫なの?」


 こっそりと確認するような杏ちゃんの瞳に、思わず声を失った。

そういえば、杏ちゃんには雛太のことを話していたんだっけ。


「……うん」


 修学旅行から帰ってきた日、雛太は「がんばれよ」って言ってくれた。

まだ少し気まずいけれど、雛太がそういうならば、あたしはがんばらなきゃいけない気がした。


 太一さんのことも、雛太に対しても。



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