フォーチュンクッキー
 まだ熱くなった顔の火照りは引かなくて、ただ握られる太一さんの手の温度がやけに冷たく感じた。


 人ごみを抜けると、校舎裏にある駐輪場までやってきていた。

さすがに生徒も一般来訪者もいなくて、遠くで聞こえてくるメロディが緊張感を漂わせた。

 すると、太一さんがようやくピタリと足を止めた。


「太一…さん……?」

 あたしが声をかけると、太一さんはそのまま半身をねじってあたしの両腕を掴みながら近くの花壇に腰掛けていた。


「…っはぁぁあ~…」

 大きな息と共に、がっくしと頭をあたしとの体の間に垂らしていた。

そんな太一さんにどうしていいかわからず、おどおどしていた。



「…っべぇ…」


 小さな声。


「え……?」

 聞き返すと、太一さんは顔をあげることなくあたしの体を引き寄せた。

ぎゅっとあたしのお腹に顔をうずめた太一さん。


 今まで見たことのない太一さんの頭のてっぺん。

つむじを発見したんだけど、次の一言が胸をくすぐった。



「…やばい、すっげぇ緊張した…」



 一瞬、心臓が止まったかと思った。


 …だってあの太一さんが緊張したんだよ。

いつも余裕綽々で笑って、意地悪ばっかで…ときどき苦しいくらい優しくて。


 ドクドクと体中の血が一気に巡り始めたのを感じていた。

ゆっくり顔をあげる太一さんの頬はうっすらピンクで、いつもよりカワイくみえる。


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