フォーチュンクッキー
 罵られたって、泣き叫ばれたってよかった。


……なのに。





「いつ、行っちゃうんですか…?」




 あまりにも落ち着いた声で言うもんだから、オレが逆に動揺してしまっていた。



「卒業式終わったら、すぐにでも……」

 情けないことに、声が震えた。

だけど目だけはそらせなかった。


 きっと、オレのことを一番に考えてくれるチビ助ならわかってくれる。


 …だから、こんなにも辛いんだ。



「じゃあ……あと、3ヶ月くらいなんですね」

 拭うことすらせず、口元だけ笑っていた。



 チビ助は知っている。

コドモなんて無力で、オトナにならなきゃ選ぶことができない。


罵って拒絶しても……結局は覆せない。


 十分すぎるほど、知ってしまっている。


「…か、体には、十分気をつけてくださいね…?」

 弱々しくチビ助はいうと、ようやくダムが壊れたかのように涙が溢れていた。


 痛いくらい唇を噛んで堪えていたけれど、もう、オレも我慢できなかった。

ガタンと勢いよく椅子から立ち上がると、真正面のチビ助を力づくで抱きしめた。


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