フォーチュンクッキー
「なにがハズカシイだ、ばーか!今度の期末テストで赤点とって推薦取り消しになってしまえっ」

 腹いせにいった言葉に、怜はすがるように慌て始めた。

多分もうすぐ行われる期末テストも、オレ頼みなのだろう。


「不吉なこというなよ、太一せんせぇ〜っ」


 これが、オレたちの日常。


 カラカラと音をたてながら回る車輪。

自転車を押すオレに、何かに気づいたようにサトが切り出してきた。


「あれから、おばさまとはどうなったの?」

 聞かれて思い出したけど、サトにはなんにも話していなかった。

母さんがチビ助の家に訪ねたとき、電話で教えてくれたのはサトだ。


 だからといって、チビ助のあの泣き笑いを見た後に、今までの経緯を話す勇気はオレにはなかった。


「なんとかなってるよ」

 曖昧に答えたオレに、サトは若干苛立っていたようだ。


「そうじゃなくて…っ」

 またもやサトのお説教モードにはいりそうになったとき。



「そういえば太一って、卒業したらどうすんだよ?」

 不意をつかれた怜の質問に口を紡いでしまった。


「…………」


 オレが留学するなんて言ったら、二人はどんな反応をするんだろうか。

それこそ盛大なお別れパーティでもされ兼ねない。


 もうすこしだけ、この雰囲気でいたいんだ。


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