フォーチュンクッキー
 いやだ。

ずっと笑っていてほしいのに、オレはそうじゃない選択しかしていない気がする。


 なんで、チビ助はオレを選んだんだ?

どんなに考えても、答えにたどり着くわけがなかった。


「太一はさ、それでいいの?」


 怜の淡々とした声に、思わず肩が震えた。

もう一度ぎゅっと拳を握り締めて、オレは吐くように呟く。


「……決めたんだ」


 窓の外は、もう藍色に塗り換わりそうに暗くなり始めていた。

白く曇るガラスは、オレの気持ちみたく何も透き通らせようとはしていなかった。


「でも、未来ちゃんは納得できねぇよな。
選ばせてやる、なんて言って太一が逃げるんだから」


「じゃぁどうしろって……っ」

 まだ抵抗するような怜に、オレは苛立ちを隠せなかった。

そしてなぜだか泣きそうになっていた。


 怜は続けた。


「太一の気持ち、伝えてこいよ。
そうやって未来ちゃんのこと考えてること……二人が納得できるように、さ」


 伝えて、チビ助にとって何か得るものがあるのか?

「……そんなの、いまさら?」

 いぶかしげに怜を見つめたけど、やっぱりそれは怜なわけで。

はは、と大きく笑った。



「サトの時と一緒だよ。『今』だからできるんだってば」




.
< 334 / 506 >

この作品をシェア

pagetop