フォーチュンクッキー
「で?今日いくんだろ?」

 昼休み直前の体育の時間だった。

怜は久々のバスケのためか、意気揚々と指先でボールを回しながらやってきた。


「……なにが」

 はぐらかそうとそっぽ向いてみたけど、わざわざ回り込んできた。


「未来ちゃんのと・こ!」

 強調して確認しないでほしい。

それのおかげで、朝から緊張が途切れてないんだ。


 うっすらクマができたオレの顔を見て、すでに見透かしているのかもしれない。

ふっと笑うと、オレが寄りかかっていた壁に重低音を響かせて何回かボールをなげつけてた。


「それにしてもさぁ、未来ちゃんも物好きだよな。なーんで太一なんだろ?」


 自分を好きになってもらう理由なんて、わからない。

きっと誰もがそうだと思うけど、だからこそ、怜の言うとおりオレは余計に自信がなくなる。


そんな弱い自分も、ますます嫌いになりそうだった。


 だから、せめて強がりたいという勝手な見栄のために、「オレのほうがいいと思うけど」とニヤついていた怜からボールを奪いとってやった。


「うっせーな!」

 そのまま各々自由につかっていたゴールを隙間を縫い、一番奥に向かってドリブルで走り抜けた。

ザッと乾いた音を立てて網をくぐったボールを拾って、元いた場所を振り向く。


 ポカンと驚いていた怜めがけて、方を大きく振りかぶって投げつけてやった。

キャッチした怜に、大きく息を吸って肺にためこむと、


「おんなじこと、松永さんに言ってみろよ!」

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