フォーチュンクッキー
 まるでオレの心を見透かした言葉にどきりとした。


「どうしても淋しくなったら手伝いにこいよ?仕方ないから、誕生日くらい祝ってやる」


 そんなこといわれるなんて思っていなくて、足がピタリととまってしまった。


 立ち止まったオレに気づいているのかわからない。

少し先に進んだマスターは、消えてしまいそうなくらい小さくつぶやいた。



 やさしすぎるその言葉に、オレは堪えるのに必死で───






「最後になるかもしれないんだから」



 やっぱりオレは、思っている以上にたくさんの人に支えられているんだ。


 小走りでマスターの隣に並ぶと、


「寒いッスね」


 と、肩をすくめて、誤魔化すように追い抜くしかできなかった。




 白い息を切らして店に到着したすぐのことだ。

さっきの気恥ずかしさもあった。

けれどマスターはオレの父親みたいな存在で、ぽつりぽつりと会話を交わすだけで十分だった。



 カランッ、と勢い良くドアのベルが響く。

数少ない客を減らすわけにも行かず、荷物をおいてカウンターへ戻る。


「いらっしゃ……」



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