フォーチュンクッキー
 冷たい空気とともにやってきたのは、肩で息をした小さな女の子。

それは、苦しくなるくらいに見覚えのあるもの。


「……チビ助?」

 昨日あんなことがあったばかりだというのに、今日やってきたということが信じられなくて。

シンと広がる沈黙に、お互い見つめあったままだった。



「あ、あの……っ」

 ようやく切り出したのはチビ助。

困ったように結っている髪が揺れる。


一日ぶりだというのに、ひどく久しぶりな気がしてならなかった。


「太一さん、あの…ですね…っ」


 頬を赤くさせてしどろもどろになっている。

それがすごく嬉しくて、緊張していたオレの心は少しずつほどけていくようだった。


 チビ助にもなにか思うことがあって、ここにやってきんだ。

一つもこぼさず、その想いを受け入れてやりたい。


「チビ助……」

「太一さんっ」


 オレたちの声が重なってしまい、どちらもその続きを口に出すことが出来ない。

気まずい雰囲気が、BGMと一緒に店内を流れる。


すこし潤んだ瞳は、あきらかに困惑している。


 いつもなら抱きしめて、照れたチビ助の顔を堪能するのだけど…。


「ああ、そうだ」


 外気にも似た冷たい空気を優しく壊したのは、やっぱりマスターだった。


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