フォーチュンクッキー
「……っぷ…」

 でも降ってきたのは、可笑しそうな太一さんの声。


「オレの誕生日の噂なんか、誰がしてるんだよ」


 手で口をおさえながら、あどけなく笑う。

あはは、とお腹を抱えて、うっすら目じりには涙を浮かべている。


「わ、笑いすぎですぅっ」


 あまりにも自分の答えが幼稚なのはわかるけど、そんなに大笑いすることではないとおもうんだけどな。


そんなあたしの気持ちなんて知るわけもなく、あのときの気まずさなんてわかんなくなるくらい笑ってた。



 でも、やっぱり太一さんは意地悪。

いつだってあたしをドキドキと心臓を早く打ち鳴らすんだもの。




 太一さんもようやく落ち着いてくると、咳払いをしながらカバンを肩にかけて、あたしの頭に手を乗っけてきた。


「オレのことより、明後日から始まる期末試験のことを考えとけよ?」


 それだけ残して、そのまま扉の向こうへと消えてしまった。



 勉強もそうだけど、やっぱり太一さんのことももっと知りたい。

あたしと太一さんの距離が、まだ出逢ったときとほとんど変わってないような気がした。



 ……それは寂しいような、嬉しいような、複雑な気分だった。



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