フォーチュンクッキー
 聞き返した小さなチビ助の、震える声。

でもその変化した声音にサトは気づくはずもなく、調子に乗ってチビ助に笑いかけている。


「そうそう、良かったらアンタも食べてみてよ……ね……?」


 言っている途中で気づいたのだろう。

チビ助が、ぎゅっと唇を噛んで拳を握っていることに。


「……はぁ」

 思わず額に手をやって、これからどうチビ助に説明しようかと思い悩む。

肩を落としたオレに、サトは耳打ちをしてきた。


「あたしってば、余計なことした……?」

 申し訳なさそうに浮かべる苦笑い。

「かなり、な」

「別に余計なことなんてないじゃないですか」


 オレたちの会話が聞こえてしまったらしく、頬がぱんぱんになりそうなほど膨れていた。


 最近みせるチビ助の苛立ち。

どうにも限界がある。


「あのなぁ……っ」

 呆れて口調が強くなってしまった。

けれど、チビ助はきっと目じりを吊り上げて奥歯をかんでいた。


「あたしはどうせ―……っ」


 そんな言葉に、ドキンと体がこわばる。


 『どうせ』……彼女じゃないから?


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