フォーチュンクッキー
 そんなことを言っても、きっとこの距離は変われない。


 じゃあ、どうしたらいい?

オレのキモチは一つだけれど、それを口にする勇気がない。


これ以上、チビ助を困惑させたくないんだ。


 しかし強い口調のチビ助は、その先を言えなくなっていた。

「おおっと、未来ちゃん!」

「ふが……っ」

 タイミングよくチビ助の口を塞いだのは、おろおろと見守っていた怜だ。


「卑屈はよくないなぁ。そんなことを言うと、ここのカッコイイお兄さんが食べちゃうよ?」

 ニカッと冬には似合わない笑顔でチビ助を見つめる。

このときばかりは、怜がいてよかったと思ったことはないだろう。


 じいっと見詰め合う二人。

それにしても、長すぎやしないか?


「怜!」

 最初に我慢できなかったのはオレの方。

肩をすくめて、チビ助のつぼらな唇を開放する。


「はいはい」

 意味ありげにオレに視線を流し、怜はチビ助を覗き込む。

すると、チビ助はきゅっとコートを握り締め俯いたまま呟いた。


「……だって」


 それなりの理由があるのか?

オレは聞き耳を立てていたのだけど。


膝を折ってチビ助の両腕を優しく掴み、怜はなだめるように微笑む。

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