フォーチュンクッキー
 あたしには聞く権利なんてない。

と、思っていたから……。


「お、お前は……雛太くんが、スキ……なのか…?」

「え…っ?」


 トクトクと鼓動が早くなる。

まさか逆に聞かれるなんて思ってなかった。


「あ、あたしは……」

 震える声が情けない。


 冷静に考えれば、サトさんっていう存在は、あたしと雛太みたいなものなのかもしれない。


「雛太は……大切な、トモダチ…」


 ホント、気にしても仕方ない相手。

だけどあたしたちはお互いに、遠慮ばっかりし合って。


「…そう、か」

 俯いた太一さんは、ほんのすこし、安心したように見えたのは錯覚かな?

でも、なんだかこうして言い合えたのは嬉しかった。


 誰もいない商店街に二人の声がやけに響きあう。

こだまするのは、頭の中だけじゃないみたいだ。


 そんな気恥ずかしさに耐え切れず、乾いた笑いを漏らさずに入られなかった。


「……えっと、じゃあ、あたし帰りますね…っ」


 キモチを紛らわすように、振り向きもせず、我が家へ走っていった。

白い息はリズムよく空に溶けて、薄暗い雲の一つになっていくよう。

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