フォーチュンクッキー
 太一さんからもらったお守りを握りしめて、あたしは商店街を抜けた。

この角を曲がれば一直線で我が家、そんなときだ。


「あっ、未来だー!」

 飛びぬけるように横から聞こえてきた明るい声。


「杏ちゃんっ!……と、雛太…」

 太陽も空高く上り、二人とあたしを遮るように照らし始める。

あたしと目が合うなりすっと視線を外した雛太は、小さな声で呟く。


「……よう…」

 ずっと気まずいままになっていた。

でも、太一さんにも言ったけど、雛太は大切なトモダチ。


できるだけ明るく振舞いたい。


「……い、意外だなぁ。も、もしかして、デートだったりしてぇ…」

 やっぱり視線を合わせることは出来なくて。

ぎこちなく笑ってみせた冗談だった。


「ち、ちが……っ」

「すごい、未来!よくわかったね」


 そう、本当に冗談のつもりだった。

だから杏ちゃんの言葉は、信じられなかった。


何故か雛太も驚いていたけど。


「キョンっ!?」

 ニコニコと、いつもどおり笑う杏ちゃんは嘘ついているようには見えない。

さらさらと冷たい風を流すように、きれいな黒髪がなびかせて、キレイに笑っているんだもん。

あたしのほうが動揺してしまった。

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