フォーチュンクッキー
 前みたいに、優しく「未来ちゃん」って笑ってくれる凛子さんも。

 修学旅行から帰ってきただけなのに、ケーキを買おうとしたお父さんも。

 親友だと思っていた杏ちゃんも雛太も。


「……れか…」


 大好きな太一さんも。



「誰か……おねがい…」


 あたしの隣には、いてくれない。



 目じりがはちきれそうに痛い。

むしろ、このまま涙が枯れて、もう泣かなくなるのならいいのかもしれない。


それでも、その痛みさえも今は辛い。





「一人に、しないで……っ!!」



 こんなトコで泣き喚いて、マスターに迷惑がかかっちゃう。

頭の端っこで冷静な自分もいたのだけど、襲い掛かる感情には逆らえなかった。


遠くで頭痛もする中、あたしは地面に大きな雫を滴らせていた。





「うん。……しないよ」



 だから、その一瞬が信じられなかったんだ。




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