フォーチュンクッキー
「……なんか、さっきから棘を感じるんだけど?」

 さすがにチビ助がいる手前、オレだけならまだしも本人が落ち込む。

杏ちゃんはニコリと微笑んだつもりだろうケド、目は座ったままだ。


「あはは、そうですね。
親友を泣かせる太一さんも腹立たしいけど、だからといって何もしない未来にも呆れてるんです」


 これが本音なのだろう。


「ハッキリ言うね……」

「わたしも思春期なんで」

 ぴしゃりと言い切った様子を見て、オレは再び深いため息をついた。


 誰もがこんな状態を見てやきもきするかもしれない。

だけど、こればっかりはチビ助の気持ちの問題もあるし、急いで答えを出したせいで後悔はさせたくない。


 立ち止まっても悩んでもいい。

だから、オレたちはオレたちで決めないといけない気がする。


 案の定、チビ助はしょぼんと肩を落としていた。

オレはようやく沸いたお湯をマグカップに注ぎ、ほんのり生クリームをたらしこみ軽くかき混ぜる。


「杏ちゃんの気持ちもわかるけど、キミたちにはもっとやるべきことがあるだろう?」

 オレの言葉に率直に反応した杏ちゃんは、ガタンと勢いよく席を立った。


「そうやって逃げるんですかっ?」

 キッと睨んでくる視線は、本当にチビ助のことだけを思っているようには見えない。

そうなってくると、いろいろ思い当たる節はあるのだけど……


 コホン、と一つ咳払いをして、マグカップを二人の前に差し出す。


「そうじゃなくて、今考えるのはオレのこと?受験?」

「………っ」

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