フォーチュンクッキー
 白い息が、高低差を作りながら曇り始めた空に消えていく。

商店街に残るわずかな灯りは、やはり寂しさを増幅させるよう。

「…あ、あの…太一さん……」

 申し訳なさそうに切り出したチビ助の声。

目もあわせず、オレの前でただ大きな白い息がふわりと溶ける。


「……もしかして、昨日のこと?」

 あてずっぽうだったのだけど、ピクンとチビ助の肩が震えた。

図星だったのか。


 薄暗くなったことを味方につけ、ほんの少し、素直になる。


「本気、だよ」

「…………っ!!」


「半分ね」


 バッと勢いよく顔をあげてきた。

だから、わざとおどけて見せるようにチラリと視線を落とした。


「どれが正解なんて、オレにもわからない。でも、確実に時間は減っていって、決めなきゃいけないときは必ずやってくる」


「太一さんも……迷ってますか?」

 思い出のつまった公民館の前を通り過ぎ、門松が並ぶ商店街も残り僅か。

肩を並べて歩く時間も、刻々と迫っている。


「じゃあ、反対に聞くけど。迷わないヤツっていると思う?」


 かなり自分でも意地が悪いと思う。

けど、オレとチビ助は同じラインに立っているんだ。


それをわかってほしい。


 チビ助の薄い肩にかけていたカバンの紐が、小さな手のひらでぎゅっと握られていた。

< 434 / 506 >

この作品をシェア

pagetop