フォーチュンクッキー
・センチメンタル
「いってきまーす」
キイと錆びた音をたてながら、古びた我が家の扉を後にした。
耳鳴りすらカンジそうな寒さの中、まだ寂しさやショックがなくなったわけではない。
けれど、あたしにはそれすらもあったかく包み込んでくれる『大切な人』が側にいてくれた。
まだまだ悩むことは山ほど残っていても、頑張れる気がしたんだ。
教室に着くと、みんな寒そうに暖房の前で固まっていた。
あたしもはやくそこへ行こうと駆け足で机に向かう。
と、そのとき。
あたしの後ろから「あ……」と小さく呟く声が聞こえてきた。
振り返ると、あれからずっと話すこともなかった杏ちゃんが、赤いチェックのマフラーをぎゅっと握り締めていた。
「杏ちゃん、おはよう!」
いつもみたいに笑いかけた。
そうしたらあのことは吹き飛ばせる、と思ってた。
「……おはよ」
あたしの想いとは裏腹に、すこし俯き加減で通り越していってしまった。
杏ちゃん……。
多分あたしのことを考えてくれて、そのせいで太一さんとあんな言い合いになったのだと思うと心が痛む。
もっとしっかりしていれば。
親友をこんなに悲しませることも、大切な人を困らせることもなかったのかもしれない。
思わずシュンと肩を落としていると、コツンと脳天を小突かれる。
「なんだよ。キョンとケンカ?」
キイと錆びた音をたてながら、古びた我が家の扉を後にした。
耳鳴りすらカンジそうな寒さの中、まだ寂しさやショックがなくなったわけではない。
けれど、あたしにはそれすらもあったかく包み込んでくれる『大切な人』が側にいてくれた。
まだまだ悩むことは山ほど残っていても、頑張れる気がしたんだ。
教室に着くと、みんな寒そうに暖房の前で固まっていた。
あたしもはやくそこへ行こうと駆け足で机に向かう。
と、そのとき。
あたしの後ろから「あ……」と小さく呟く声が聞こえてきた。
振り返ると、あれからずっと話すこともなかった杏ちゃんが、赤いチェックのマフラーをぎゅっと握り締めていた。
「杏ちゃん、おはよう!」
いつもみたいに笑いかけた。
そうしたらあのことは吹き飛ばせる、と思ってた。
「……おはよ」
あたしの想いとは裏腹に、すこし俯き加減で通り越していってしまった。
杏ちゃん……。
多分あたしのことを考えてくれて、そのせいで太一さんとあんな言い合いになったのだと思うと心が痛む。
もっとしっかりしていれば。
親友をこんなに悲しませることも、大切な人を困らせることもなかったのかもしれない。
思わずシュンと肩を落としていると、コツンと脳天を小突かれる。
「なんだよ。キョンとケンカ?」