フォーチュンクッキー
「………」

「………」


 無言を返されてあたしもどうにかバレないかとヒヤヒヤしていた。


 静かに流れ始める店内のBGMで冷静になんてなれない。

ドキドキと緊張するあたしに対して、太一さんは何故か、ハア、と呆れていた。


「オレと怜は、お前と杏ちゃんの関係とは大いに違うから、なんとも答えられないな」

「……え?違うんですか?」


 おもわず顔をあげた先には、驚きながらもクスリと笑いを零す太一さんの意地悪な笑顔。


「いいの?否定しないとバレたままだけど?」

「えっ、あ……、そうですねっ」


 言われて気づいた。

どうしてあたしと杏ちゃんのことだってわかったんだろう?


 折角気づかれないようにと思ってたとえ話をしたのに、これじゃあまるで意味がない。


焦っていたあたしの頭を、軽くポンと叩いた太一さんはくるりと背を向けて、カップをいじり始める。


「……─オレたちはいわば悪友だな。
ずっとお互いをみてきたわけじゃないし、かといって『泣かせるな!』なんて相手先にまで喧嘩を売るような奴じゃない」

 むしろ矛先はオレだけど、と太一さんは苦笑いしてた。

皮肉なのに楽しそうに話す姿は、どこかうらやましくもある。


 そして、最近よく飲むようになったココアを差し出しながら、もう一度濃いコーヒー色の瞳で見下ろしてきた。


「杏ちゃんとそうなったの、あの日のせいだろ?」


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