フォーチュンクッキー
 大切、だから…?


 太一さんの言葉は痛いくらい胸に突き刺さり、沁みていく。

けれど、同じコトをお父さんや雛太に言われたって、きっと聞かないかもとは思う。


「杏ちゃんはずっとお前のそばにいた。
だから、こんな不安定なオレたちの状況が許せないんだろうな」


 むしろオレのせいかな、なんて自嘲気味におどけて見せた。

結局、太一さんにも心配をかけてしまったのだ。


「……あたし、どうしたらいいですか?」


 こんなにたくさんの人を巻き込んで悩んで。

何一つ、前に進めていない気がする。


「さぁな。すべてオレの推測だし確信なんて一つもない。
けど、見ててわかることもあるから、言っただけだ」

 言い放った言葉は冷たいかもしれないけど、今のあたしには、真実に聞こえた。


 きゅっと唇をかみ締めていると、静かに響く声。


「お前自身はどうしたい?」

「あたしは………」


 杏ちゃんと一緒に笑って、泣いて、怒って。

そして弱音を吐いたら慰めてくれたあと、元気をいっぱいくれた。


 頭もよくて頼りになるお姉さんみたいな親友。

…──そう決め付けていたのは、他でもないあたしだった。


 それが杏ちゃんには苦しかったのかな。

あたしは恋なんて知らなかったし、今でも太一さんを思えば不安定なときだってある。


 だけど、太一さんが言ってくれた言葉を信じたいから。



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