フォーチュンクッキー
「あたし……」
『ずっと好き』
と言ってくれた太一さんを信じたいから─……。
「杏ちゃんに、わかってほしい……」
そっと呟くと、あたしの脳天からはずっしりと大きな手のひらから重さが加わる。
あたしにはすこし苦い、コーヒーを香らせて。
「なら、伝えてこいよ。……─お前のキモチをさ」
カバンをぎゅっと握り締めて、あたしはお店を飛び出していた。
作業が進んでいなかった杏ちゃんは、まだ学校にいるはずだ。
一人寂しく歩いた道のりを、あたしは全力で走った。
もうオレンジ色の太陽が雲を赤く染めていた。
久々にあんなに走ったものだから、体はぽかぽかと温まり始めている。
上履きにも履き替えずに、脱ぎ捨てるように昇降口から階段を駆け上がった。
あたしたちのクラスだけではなく、廊下に間で響く各教室からの話し声。
三年生しかいないこのフロアの冷たいタイルを、息も絶え絶えにヒタヒタと感じてた。
三つ目の教室。
やけに静かで、通いなれている部屋だなんて思えなくて。
震える指先で教室の戸に触れようとした、そのときだった。