フォーチュンクッキー
「どういうつもりだよ…」

「ヒナまで、あたしを責めるんだ?」


 聞き覚えのある二人の声に、あたしはピクンと手を引っ込めてしまう。


 ……―雛太と杏ちゃん?


「はあ?何を言ってるんだよ。
未来と何があったか知らないけど、拗ねてるならいい加減機嫌直せよ」


 言葉強めにいう雛太。

面倒そうな口調だけど、きっと杏ちゃんのことを心配していたんだ。


「……ヒナには、わかんない」


「人を巻き込んでおいて、よく言うよ!」


 小さな杏ちゃんの声に、糸をくくりつけられたように胸が締め付けられるようだ。

ここまで責めてしまったのは、多分あたしのせいだから。


 雛太の荒げた声は、廊下にまでしっかり響く。

いつもは仲がいい二人が言い合っているのは、本当に心苦しい。



「ナニそれ!?まんざらでもないような反応してたくせに!」

「ば……っか!あれは未来のためだろう!?」

「ほら、また未来!」


 あたしの、ため?

突然出た名前に、ドキリと何故か図星を指されたような気分になる。


「嘘に付き合ってやったオレによくそんなこといえるな!
『冗談に決まってるでしょ、馬鹿ヒナ!』だなんて暴言まで添えてさ!」


 イラだった雛太の言葉に、あたしはまた情けなくなる。

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