フォーチュンクッキー

 ……―嘘、だったんだ。

そんなことまで気づかなくって、あたしは本当に大馬鹿だ。



「…じゃ……もん…」


 糸のように細い杏ちゃんの声は、やけに教室に響く。

息を呑む音すら、あたしの耳に届いた。


「なんなんだよ!?」

 それからなかなか話そうとしない杏ちゃんに、雛太は怒りの頂点に達してしまったのだろう。

責め立てるような口調と言葉に、あたしも泣きそうだった。


けど、震えた声で杏ちゃんは泣き叫んでいた。




「嘘じゃないもん!…本気だもん……っ!!」


 

 漏れてくる嗚咽が、体中を歯がゆさで支配していく。

何も気づいてあげられなかった自分が、ものすごく腹立たしくて。


「……キョ……ン…っ?」

 すっとんきょうな声を出した雛太。



「バカバカバカバカ!ずっと片思いしてたのは自分だけだと思うな!!」


 大きな杏ちゃんの声が聞こえた直後、ガタガタと机が動いた音。

すると、いきなり目の前の扉がガラリッと勢いよく開かれた。


「……み、らい…っ」


< 447 / 506 >

この作品をシェア

pagetop