フォーチュンクッキー
「頭では、また、コイツを寂しくさせるって……わかってるんです」


 泣きながらしがみついてきた夏も、顔を真っ赤にさせた秋も、思い悩んだ冬も。

ずっと、そばで見てた。


「そんなオレなのに、否定も拒否もしなかった。……─だから、応えたくて」


 ごめん、って何度も心で叫んでた。

オレは間違ってるって、何度も自責した。


 いや、本当は今でも思ってる。

でも、お前ならきっとこう言うから。



 ……────がんばって、と。



 隣では、照れも交えた驚きの目で、見つめられていた。


「太一、さん……」


 恥なんて承知の上。

でも、ここで逃げたら一生後悔する。


 チビ助のことが大切なのは、きっとこの先も変わらない。
 
そんなオレの心中を察するかのように、もじもじと口を開いたのはおじさんだった。



「……─太一くんは、その、将来のことを…どう思ってるんだ?」


 突然のおじさんからの質問に、言葉を失う。


「え……?…あ、あの……」


 将来────だなんて、話の流れ的にとても極端な方向でしか考えられない。

だけどおじさんも、複雑そうにすこし顔を赤らめて視線を外している。



 相変わらず、当の本人はきょとんとしているのだけど。

< 461 / 506 >

この作品をシェア

pagetop