フォーチュンクッキー
 不覚にも、声が震えた。

「……今…約束、できないです」


 断言できるほど自信なんかない。

ただ、一ついえることもある。


「そ、そう…だよな…」


 なんとか緊張で震える拳を握り、意を決して顔をあげた。


「でも!……ずっと、隣にはいたいと────思ってます」


 ぼけーっとチビ助はオレたちを交互に見合わせる中。

おじさんも驚いたように顔をあげてきたから、ばっちりと目が合った。

さぞかしオレの目は泳いでいることだろう。


 けど、ここで退けない。



 静かな夜風は、大のオトコを惑わすには十分すぎた。

どうやっても、沈黙を破れないこの空間。


なのに、あいつは意図も簡単にやってのけた。



「そっか。お父さんと太一さん、仲がよくてよかったぁ」



 間のびした声に、オレはどっと肩の力が抜ける。

それはおじさんも一緒だったのか、くすくすと笑い出した。


「えっ?なに?」

 現状を把握できておらず、慌て始めるチビ助の姿は、きっとオレとおじさんが共有できるキモチ。


「未来はホント、いい子だな」

 クセのある前髪をくしゃり、と撫でる大きな手のひら。

そんな姿は微笑ましくて。


「ホント、ですね」

 たまらずオレも、笑ってしまったんだ。




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