フォーチュンクッキー
「…そういや、あの子。今日発表よね」

 せっせと荷造りをするオレの後ろで、ソファに腰掛けたサトは、わざわざ大きめの声で尋ねてきた。


 慰労会──…いや、受験が終わった一週間後にやってくるのは、運命の日。


寒さ厳しい今朝、オレはなぜか妙に早く目が覚めた。

そして、なんとなくそわそわする気持ちを落ち着かせるように、段ボールに荷物をつめていた。


 そんな矢先にサトはやってきたのだ。


「………」

 何も応えず手だけを動かしていたオレの背後で、はあ、と深いため息が零れた。

それでも、無言で気にしないようにしてた。


「太一まで慌てたって、どうにもなんないわよ」

「だ、誰もあわててなんか……っ」


 振り向いた先では、サトがカワイイ顔を呆れきった表情に歪めていた。

その視線とともに、ぴっと人差し指が向けられたのはオレの手元。


「段ボール。…荷物はいってないのに封してるけど?」


 指摘されて持ち上げた段ボール箱は、簡単に片手でつかめるほど軽かった。

しかも、こんなときに限ってキレイにガムテープが貼られている。


 …──ちくしょうっ!!


 恨めしげに、ビリリと音を立てながらテープを勢い良く剥がした。


そんなオレをバカにするように、サトはわざとらしく「はあ~あ」と再びため息をついていた。


 ずっと口を引き締めていたオレも、なんとなく不安だったのかもしれない。



「……一応、連絡くれることになってるから」


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