フォーチュンクッキー
「もしもし?」

『んっ……、──んん…っ』


 さっきからオカシイ。


 執念深く耳を澄ませてはいるものの。

時間が経つたびに、その音はなんだかイヤラシイものに聞こえて仕方がない。


「……あー、もしもし?」


 荒い息遣いが少し離れたと思ったら、ようやくまともな声が返ってくる。

しかしその声は─……


 記憶を辿って、つい最近聞いたアルトの響く主。

一人だけ思い当たる。


「──雛太、くん?」

『正ー解』


 と、いうことは、さっきの慌てるような……どこか困ったような声はチビ助なのか。

なんとも変な声を出すもんだから、内心焦っていた。


 おそらく周りが騒がしいのは、受験の発表で周りが歓喜と落胆でひしめき合っているのだろう。


「…どうして雛太くんがオレの携帯番号を知ってるの?」


 っていうか、チビ助を出せよ。


『それは……オレと未来の仲だから、かな?』


 クスリと含みを持たせた笑い方。

なにかと気に障るのが、雛太くんの特徴だとオレは思っている。


 チビ助が雛太くんの携帯を借りてオレの所へ連絡し、繋がった瞬間に強奪。

──といったところか。


しかしこんな挑発に乗るほど、オレもコドモじゃないんだ。


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