フォーチュンクッキー
『雛太はちょっと、待ってってば!……あ、すみません、太一さん!』
待つ?なにを?
オレの妄想は、すごいことになってるんだけど。
いつの間にか、携帯を握り締める手はびっしょりと汗で濡れていた。
『あの、ですね…』
「今、学校だよな?」
『え……?あ、はい。そう、ですけど……?』
何かを言いかけたチビ助を遮ってまで確認してしまう自分が、情けない。
おそらくチビ助はきょとんとして、ナニがドウなっているのかもわかっていない。
いや、オレだってわからない。
だけど、少なからずチビ助の隣には思いを寄せる彼もいるわけで。
「今から行くから、ちょっと待ってろ」
『えっ、あの……っ!?』
ろくにチビ助の返事も聞かず、オレは通話を終わらせていた。
「太一、どうしたの?」
つぶらな瞳をまんまるにさせたサトをすっと通り越して、玄関にしゃがみこむ。
「ちょっと、準備も放って出かけるの?」
「…──迎えに行ってくる」
バタバタと駆け足でやってきたサトと、目も合わせられなかった。
そんな余裕、今のオレには欠片もなくて。
「ナニを怒ってるか知らないけど、あたしも出ておいたほうがよさそうね」
サトは玄関先にかけていたコートを手に取ると、先に扉の向こうに消えた。