フォーチュンクッキー
 こんなときこそ、怜さんがいてくれればな。

なんて他力本願なことを願いつつ、妙な間をどうやって埋めようか、と頭を悩ませたときだった。


「…なんなら、制服あげようか?」


 突然のことに言葉を失う。

……それに、サトさんはあたしが嫌いじゃないのかな?


 聞きたいけど、聞くのも怖い。

でも、どうしていいかわからなくって。


 けれど、サトさんは口をパクパクさせていたあたしを気にする素振りもなく、小首をかしげていた。

あたしの身体を一瞥すると、むーんと人差し指を顎にかけた仕草は、すっとした輪郭を強調させるように見えた。


「ってか、アンタちっちゃいわね。
…まあ、どうにかして合いそうなサイズ探しておいてあげるけどさ。あんまり期待しないでよね?」


 それはどこか、杏ちゃんにも似ていて──……


「あの、……サトさん」

「なーに?」


 面倒そうに返ってきた言葉は、雛太のほうが似ているかも。

そう考えたら、寒い冬に飲んでいたココアみたくじんわりと温かくなる。


「えへ、……なんか、お姉ちゃんができたみたいで嬉しいです」


 叱ってくれるような優しさ。

お母さんじゃないし、杏ちゃんや雛太でもない……まっすぐな言葉。





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