フォーチュンクッキー
「行くか?」

 あたしはおおきく頷いた。


 太一さんはあまり口数は多くないけれど、あたしが見ているのに気づくと「なんだよ」ってちょっと照れてる。

男の人なのに、かわいいって思ってしまうのはおかしいかな?




 商店街は昼間より断然人が多かった。

「すごい人だなぁ」

 思わずこぼした太一さんの言葉に、あたしも同感だ。


 背の高い太一さんに追いつくので精一杯。

おばさんのでかいかばんが肩に当たったりと、ちびっこなあたしは痛くて仕方ない。

人ごみが落ち着いたところで太一さんは待っていてくれた。


「すみません~」

 あたしがいうなり、手が引っ張られた。

 ビックリして顔を見上げれば、口はしを少しだけ吊り上げて前を歩き出した。


「きちんとつかまってろよ?」


 大きな彼の手の中に、あたしの手がすっぽり握られた。


突然の出来事に、ドクドクと心臓が壊れるくらい波打つ。



…ちがう。

手を握られたからなんかじゃない。



本当はそれよりももっと前から、ドキドキしてた。

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