フォーチュンクッキー
 肉屋のおじさんや八百屋のおばさんたちは太一さんを明るく歓迎してる。


 その風景を見ていたら、いきなり頭を撫でられた。


「未来ちゃんじゃないか、どうしたの?」

 降ってきた声は、マスター。

「太一さんが連れてきてくれました」

 素直に答えると少し呆れたようだった。

マスターはいつもの格好で、もっと違う姿を想像してたから逆に驚いた。


「うちのお店はね、休憩所のお手伝いなんだよ」


 あたしの疑問に答えるかのように話してくれた。

そしてあんな大きな段ボール箱の理由がわかった気がした。


「太一のヤツ、未来ちゃんにも手伝わせようとしてるのかも」

 困ったように腰に手を当てて、マスターは見てきた。

なんだかあの喫茶店の一員になれたような気がして、あたしは嬉しくなった。


「あの、あたしでよければ…」

 あたしは太一さんから借りたシャツを腕まくりしてマスターを見上げた。

すこし驚いていたけれど、優しく微笑んで「ありがとう」といってくれた。



「チビ助」

 太一さんに呼ばれて駆け寄ると、いつの間に魚屋さんの腰エプロンを巻いていて驚いた。


 手には丸いお盆に紙コップのコーヒー。

そして、さっき手渡した紙袋が器用に開けられて、お皿を必要としていなかった。


「この子が作ったクッキーなんですよ」


 目の前のおじさんとおばさんに紹介されたので、あわててわけもわからずお辞儀した。

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