フォーチュンクッキー
 少しきつい言い方かもしれないけど、オレはチビ助のために先生やってるんだ。


 こんなこと、これからのコイツの勉強の仕方に関わってしまうんだ。


 オレの思いが伝わったのか、チビ助は満面の笑顔を返してきた。

ほっと胸をなでおろした瞬間。


「太一さんのためなら、背伸びくらいへっちゃら!」


 強めのクセっ毛を揺らして笑ってくる。


切り返しがうますぎるよ。


答えたら勉強しに来なくなるだろ?

だめだ、……そんなのは絶対に。


 こんな小さな女の子なのに一丁前に『女』にみえる。

そんな戸惑いがばれたくなかった。


こうなったら、反則ワザだ。


「あいたっ!」


 中指で目の前にある健康的なおでこをはじいた。

反応が面白いからついついやってしまうんだけど、今日だけは違かった。


 なぜか、こんなにはぐらかされてるのに嬉しそうに笑ってる。

答えを待っているようにはみえなくて…。



 達成感にあふれてて、目の前にいる彼女にだけは、もう誤魔化せない。


 それだけは、ひしひしと身に伝わってくる。
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