フォーチュンクッキー
「太一…」

 疑問がありすぎて、この状況に頭が追いつかない。


「…どうしたんだよ、今日学校も来ないし」

 なんとか足を動かして静まり返った店内に入る。

 時間的にはもうチビ助がきてておかしくないのに、さらにサトがいたことが余計に混乱させていた。


「…ごめん…」

 うつむいてただ涙を落とす、オレの大切な人。

 いつも目に付くあのごつい腕時計は見当たらなくて、さらに驚いた。


 カウンターの中に入れば自然に体が動いた。

 カップを取り出して、すこし冷めたコーヒーを注ぐ。


「今来たばっかだから勘弁しろよ?」

 コトンと小さな音を立てて、サトの前に差し出した。


「…ありがとう」

 口だけ笑うサトは、どうしてかオレの胸が痛い。



「怜となんかあったのか?」


 朝から怜の様子、今日一日休んだサトを見ればさすがのオレだってわかる。
 一口カップに口をつけると、すこし潤んだ瞳でサトは見つめてきた。


「…太一、どこにも行かないでよ…」


 何を言っているのかわからなかった。


 確かに学校に行く回数は断然少なくなったけど、まったく会わないわけでもないし。


 大切な…、トモダチだろう?


「サト?」

 何も言わない目の前にいる彼女は、オレにすっと手を伸ばした。

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