フォーチュンクッキー
「彼ね、未来ちゃんを探してたんだって」

 あたしは驚いて顔を上げると、そこにはふんわりと笑った凛子さん。

なんにも聞かれていないのに全部知っているかのようだ。


 当の太一さんには一つだけため息をつかれてしまった。

直後、ふらっと足がもつれたのを太一さんが腰の辺りをもって支えてくれた。


「す、すいません…」


 こんなに近いと、ドキドキしちゃうよ。


 直視できなくて俯いた。


「じゃあ、連れて帰るんで」

 苦い香りと甘い声で、凛子さんにむかって笑った。

それを見てるだけでも心臓が痛い。


「うん、じゃあね」

 笑顔の凛子さんはそういって身を翻して白い建物に入っていく。


 それを見届けてから、太一さんはまたいつもの意地悪な顔であたしを見てきた。


なんとなく、冷や汗をかきはじめた。
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