フォーチュンクッキー
「ほら、乗れ」

 しゃがみこんで背中を向けてくれた。



 こ…これって、おんぶ?


でも確かに自分の足がふらついていたのは分かってた。


「お…重いですから」


 断ってなんとか歩こうとしたけど、またよろめいて、うまいこと太一さんの背中に倒れこんだ。


慌てて離れようとしたら、そのまま担ぎ上げられた。


「たたた、太一さんっ」


 絶対、あたしってば顔赤い。

でも放さないそのたくましい腕と広い背中が、やけに嬉しかった。

「しっかりつかまってろよ?」


 見慣れないこの高さからの風景。


 落ちないようにすこしだけ首に回す腕の力もこめた。


 街灯もちらちらつき始めた道を、おぶられながら進んだ。

人もまばらで、後すこしで喫茶店につくころだ。



「…太一さん」

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