フォーチュンクッキー
 返答はなかったけど、こんな至近距離だからきっと聞こえてる。



 あれが答えだったんでしょう?

 ただ困らせてしまって、ごめんなさい…。



どくどく体中の血が巡ってるのが分かる。


 太一さんにもバレてるかも。

だけど、伝えておきたい。


「もう少しでいいから、…好きでいていいですか?」



 小さくなった震える自分の声も、今は愛しい。

お母さんがあたしを包んでくれたから。

 何にも答えなんてくれるわけないけど、それでもよかった。



 遠くでオレンジ色が消えかかっていたので、こんなに熱いのはあたしの体温のせいだ。

火照った頬をうずめるように、腕に力をいれる。



 苦しいかな?

でも、あたしも苦しいよ。



 全部全部、このキモチを知ってほしいというのはわがままだよね。

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