フォーチュンクッキー
「はい!」

 今にもスキップしてしまいそうな足取りで浴室に向かった。

 パジャマのボタンを外しているときだ。

シャッとカーテンがすこし開けられる。

一瞬どきりとしたけど、その人の顔で安心した。


「新しいパジャマだよ〜」

 そろそろと入ってきたのは杏ちゃんだ。

お父さんに頼まれたんだろう。


「ありがとう!」

 ブルーのストライプがはいったパジャマを受け取ると、まだ出ていかない杏ちゃんを見つめた。

不思議がっていると、ようやく口を開いた。


「体の線みえちゃうからコレ着るんだよ!?」

 少し小声でパジャマの間から薄いカーディガンを渡してくれた。


 杏ちゃんもヒナもこの家には来慣れていたから、特にそういうのは気にしなかった。

だけど、今だけは太一さんがいる。


 そういう彼女の気遣いがすごく嬉しかった。

持つべきものは友だ。



 またダイニングに戻ろうとする杏ちゃんは一回だけ振り向いた。

ぱっちりとした瞳をキラリと光らせて笑う。


「今度きちんと話きかせてね?」

 そういってまたカーテンを閉めて出て行った。
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