フォーチュンクッキー
 小さな時からずっと一緒にいるけど、こんな雛太を見るのは滅多にない。


しかもそれを笑う太一さんって一体…?


「ヒナタくん?オレ“先生”なの」

 太一さんはにっこり笑う。



だけどあたしは知ってる。

そんな風に笑うときはいつだって、意地悪なんだ。



 太一さんは席を立つと、あたしの真後ろまでくる。

一つ一つの行動にさえドキドキしてしまって、見上げると優しい太一さんの笑顔。


 せっかく引いてきた熱が、ぶり返してしまったのかな?

彼の手が伸びて肩にかかる。


「例えば…」

 あまりの心臓の速さにぎゅっと目をつぶる。


その瞬間、わしわしと勢いよくタオルで髪を拭かれた。

布のこすれる音や大きな太一さんの指があたしの髪を触る音が、耳を包む。

おかげで周りの音がよく聞こえない。


「たっ、太一さん…っ」

 ようやく緩めてくれた手の隙間から声が聞こえた。



「…手取り足取り、ね」

 水っぽかった髪が随分水気をなくして、いつものクセを取り戻しつつあった。

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