心の傷の痛みさえ
・・・私、何やっているんだろう。
失恋した反動で知らない男の部屋に来るなんてどうかしてる。
そうは思うけれども、もう気力が無い。
ドライヤー片手に戻ってきた和真が、私の髪を乾かしベッドルームの扉を開けた時にはもうどうでもいいや、という
心境でしかなった。
だけど和真は私を毛布で包んで自分も布団をかぶり、「寝てねーんだろ。余計な事考えなくていいからとりあえず寝ろ。」と
一言言って数分後には寝息を立てはじめる。

会社の同僚には誰にも社内恋愛をしている事を言ってなかったから、誰にもこの気持ちを吐き出す事が出来なくて。
周りの友人達は結婚が決まった子もいたから、水を差すような事も言えなくて。

本当は。
本当はすごくすごく苦しかった。
行き場のない気持ちを自分で消化出来ないのが苦しくて苦しくて仕方なかった。
じわりと溢れてくる涙を、奥歯をかみしめて堪える。
毛布にくるまれた身体を少しだけ丸めて、目を閉じるとぐい、とほんの少しだけ抱き寄せられた。
その腕と体温の心地よさに私はやっと少しだけ眠る事が出来た。
< 4 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop