落ちぶれ令嬢として嫁いだら、 黒騎士様の溺愛が待っていました
序章 黒い竜に出会う日
――黒い竜だ。
プラチナはなぜか、そう直感した。
こちらを見る、圧倒されそうな蒼天の目。息を呑むような青の色とは対照的に、全身を黒の甲冑とマントに身を包んで、長身の男は人ならざるもののような威圧感を放っている。
鮮やかな碧眼に加え、めったに見ない端整な顔立ちをしていた。
青い瞳の男は、射るような目でプラチナを見つめていた。
「彼女が、〝竜使い〟であると?」
男の声はよく通り、穏やかに響く。整った唇にはうっすらと微笑さえ浮かんでいる。
だがプラチナには、それがまったく笑っている表情に見えなかった。玉座の王や宰相だけが、いかめしい顔をなんとか保って重々しくうなずいている。しかしそれが恐怖や怯えを隠すための虚勢の表情であることは、プラチナにも薄々感じ取れた。
――王や宰相をたじろがせるのは、この黒い竜のような男一人だけではない。
本来、選ばれた者のみが入れる謁見の間には、黒の男と男が率いた黒の軍の兵たちが足を踏み入れている。その腰に剣を、手には槍を携えた物物しい姿のままに。
この国のものではない国旗が、玉座の間に翻っている。
その異常事態の中、自分の身のことを話されているはずなのに、プラチナは口を挟むことができなかった。
青い目の男もまた、プラチナを見つめながら、プラチナに訊ねているのではなかった。
そうして、男の唇からふっと物憂げなため息が一つこぼれる。
「――では、賠償金と共に彼女を貰い受けます」
大国から来た男は、そう言ってプラチナを立たせた。
プラチナはなぜか、そう直感した。
こちらを見る、圧倒されそうな蒼天の目。息を呑むような青の色とは対照的に、全身を黒の甲冑とマントに身を包んで、長身の男は人ならざるもののような威圧感を放っている。
鮮やかな碧眼に加え、めったに見ない端整な顔立ちをしていた。
青い瞳の男は、射るような目でプラチナを見つめていた。
「彼女が、〝竜使い〟であると?」
男の声はよく通り、穏やかに響く。整った唇にはうっすらと微笑さえ浮かんでいる。
だがプラチナには、それがまったく笑っている表情に見えなかった。玉座の王や宰相だけが、いかめしい顔をなんとか保って重々しくうなずいている。しかしそれが恐怖や怯えを隠すための虚勢の表情であることは、プラチナにも薄々感じ取れた。
――王や宰相をたじろがせるのは、この黒い竜のような男一人だけではない。
本来、選ばれた者のみが入れる謁見の間には、黒の男と男が率いた黒の軍の兵たちが足を踏み入れている。その腰に剣を、手には槍を携えた物物しい姿のままに。
この国のものではない国旗が、玉座の間に翻っている。
その異常事態の中、自分の身のことを話されているはずなのに、プラチナは口を挟むことができなかった。
青い目の男もまた、プラチナを見つめながら、プラチナに訊ねているのではなかった。
そうして、男の唇からふっと物憂げなため息が一つこぼれる。
「――では、賠償金と共に彼女を貰い受けます」
大国から来た男は、そう言ってプラチナを立たせた。
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