真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

「ううん、私はクラスメートとほとんど話さないから」

「あー……、うん、わかるよ、私も。連絡がある時とか、そういうどうしても話さなくちゃいけない時しか、話したりしないよね」

「もう五月だけどさ、彩葉ちゃんはクラスに友達って出来た?」



息吹ちゃんの質問に私は首を振る。

勿論、横にブンブンと。

それは力強く。



「私もー」
と、息吹ちゃんは力無く笑った。



「……息吹ちゃん、私さ」

「ん?」



私はさっき聞いてしまったことを話した。

時田さんが『殺されたらしい』という噂のことを。

精一杯の小声で。



「えっ、噂になってるの?てっきり増岡さんだけの考えかと思っていたよ」
と、息吹ちゃん。



息吹ちゃんの小さなつぶらな目が、めいいっぱい見開かれている。



私達は「第二教室棟」と呼ばれている、南校舎を出た。

「第二教室棟」は二年生の学級がある、他の校舎より少し小さな校舎。

「第二教室棟」を出ると、時計塔のある広場、その名も「時計広場」に出る。

ちなみに「第一教室棟」と呼ばれる西校舎は、一年生と三年生の学級があって、時計広場を挟んで「第二教室棟」と向かい合わせでL字型に建っている。

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