真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
息吹ちゃんが慌てたように、
「時田さんを見ているんですかっ!?」
と、もう一度確認している。
唐沢くんは頷く。
「でも、ひとりでした。本校舎から中庭を通って、北校舎にまっすぐ入って行ったのを見ています。俺達は中庭で、水川先生が来るのを待っている時でした。部室で着替える前です」
「その時、時田さんは何か、持っていませんでしたか!?」
「え、何か?」
「例えば鍵ですっ!」
唐沢くんは、
「いや、持っていないと思います」
と断言した。
「俺、時田さんが北校舎に入って少しした後、思い出して陸上部の部室の鍵を取りに行ったんです。水川先生がまだ来る前でした」
「職員室にですか?」
唐沢くんは「そう」と言って、
「職員室で預かってる鍵は、職員室の入り口付近にぶら下がっている木の板に表みたいになっていて、それぞれどこの鍵かっていうシールが貼ってあります」
私達は頷く。
「俺が取りに行った時、陸上部の部室の鍵の右隣にある、女子ソフトボール部の部室の鍵が無かっただけで、他はありました。だから、時田さんが鍵を持って行っていることはないと思います」