真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

唐沢くんは、
「何人か見た気がする。男子も女子も。……でも、覚えているのは滝口って人」
と、言った。



「えっ?」



(滝口くん!?)



また滝口くんの名前が出てきて、私達は驚きを隠せない。




「知らないですか?ほら、イケメンで有名な人」

「知っています。クラスメートです」
と、息吹ちゃんが返事をすると、唐沢くんはこう続けた。



「本校舎から出て来たんですよ。多分昇降口に行ってたんじゃないかな。上靴だったから」

「外靴から上靴に履き替えていたってことか」
と、ゆみちゃんも思案顔で言う。



寧々様は慌てた様子で、
「ちょっと、みんなぁ、違うよぅ。滝口くんは悪いことなんてしないってぇ」
と、私達みんなを見ている。



「うん、多分犯人ではないと思います」



そう言ったのは、唐沢くんだった。

寧々様の表情が、明るくなる。



「どうしてそう断言出来ますか?」
と、息吹ちゃんは慎重に尋ねる。

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