真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
唐沢くんは、
「柴田さんの推理が正しいとして、時田さんが北校舎の屋上から落下したことが原因で亡くなったのなら、滝口くんの登場時間がおかしいんです」
と、息吹ちゃんを見た。
「登場時間?」
と、ゆみちゃんが不思議そうな顔。
「本校舎から出て来て、北校舎に向かう時、中庭に登場するじゃん」
唐沢くんはゆみちゃんに説明する。
ゆみちゃんは「うん」と、頷く。
「おかしいって?」
と、息吹ちゃん。
「俺達が中庭で『ドンッ』と鈍い音を聞いた直後でした。滝口くんが本校舎から中庭に来たのは。柴田さんの推理通りなら、この鈍い音って時田さんが落下して、地面に叩きつけられた音でしょう?」
「あっ……そうか」
私もメモ帳から顔をあげる。
「それなら、落下の時には滝口くんは時田さんのそばにいないことになりますよね」
唐沢くんが頷く。
「その音を聞いて、滝口くんは走って北校舎に入って行ったんです。だから、犯人じゃないと思う」