真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

第三話 失踪


「三年の竹中先輩ってさ、失踪したらしいよ」
と、私の席の隣に座っているクラスメートが言った。



昼休み。

県立第二高校の、二年三組の教室で。



その子と話している他のクラスメート達は、
「竹中?誰?」
なんて、怪訝な顔をしてから、
「美術部のイケメンか」
と、さほど興味の無いような声で返す。



「ずっと帰ってないんだって。美術部の友達が言ってたけれどさー」

「何?」

「……市川 櫻子が関わってるかもって話」



こっそり聞いていた私は驚いて、思わず「えっ」と、言いかけた。

危ない、危ない。

もう少しで声を出すところだった。



市川さんが、竹中先輩の失踪に関わっている?



(なんで?)




もっと話を聞きたかったのに、授業の予鈴が鳴り、彼女達は慌てて席に着いた。



(失踪したかもって話、本当だったんだ)




どうなっているんだろう?

時田さんや橋谷先生の事件といい、この学校には平和が欠けている。







六月になり、暑さが増していく毎日に、もう既にうんざりしている。

< 108 / 195 >

この作品をシェア

pagetop