真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
第三話 失踪
「三年の竹中先輩ってさ、失踪したらしいよ」
と、私の席の隣に座っているクラスメートが言った。
昼休み。
県立第二高校の、二年三組の教室で。
その子と話している他のクラスメート達は、
「竹中?誰?」
なんて、怪訝な顔をしてから、
「美術部のイケメンか」
と、さほど興味の無いような声で返す。
「ずっと帰ってないんだって。美術部の友達が言ってたけれどさー」
「何?」
「……市川 櫻子が関わってるかもって話」
こっそり聞いていた私は驚いて、思わず「えっ」と、言いかけた。
危ない、危ない。
もう少しで声を出すところだった。
市川さんが、竹中先輩の失踪に関わっている?
(なんで?)
もっと話を聞きたかったのに、授業の予鈴が鳴り、彼女達は慌てて席に着いた。
(失踪したかもって話、本当だったんだ)
どうなっているんだろう?
時田さんや橋谷先生の事件といい、この学校には平和が欠けている。
六月になり、暑さが増していく毎日に、もう既にうんざりしている。