真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
「なんでそう思うの?」
「……加瀬さんが、時田さんに逆らうなんて思えない」
「……」
私は目の前の景色が滲んでいることに気づいた。
追い詰められていた加瀬さんを思うと、つらかった。
涙がこぼれそうだから、顔を上げた。
すると、電車の中。
こちらに近寄ってくる人がいる。
「息吹ちゃん……」
「え?……あっ」
その人は、私達の前の座席に座る。
「あんたら?文芸部で探偵をしているって奴は」
私の喉が、ごくんっと鳴る。
目の前にいる、その彼は。
怒ったような表情をしているけれど、途方もなく美しい顔をしている。
「滝口くん……、なんでここに?」
息吹ちゃんが喉の奥から搾り出した声で尋ねる。
「あんたらを探していたからだよ」
滝口くんはそう言って、睨むような目つきでこう言った。
「誰から頼まれた?」