真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
「それは言えません」
と、私は答える。
吉井さんの名前を出したら、吉井さんが危ないかもしれない。
滝口くんは形の良い眉を寄せて、
「……時田のこと、あんただって良く思ってなかったじゃん」
と、息吹ちゃんを見た。
「えっ」
と、息吹ちゃんの目が丸くなる。
「見ていたらわかる。あんたは、あぁいうタイプが許せないんだろ?過去に何かあったか?」
まるで責めるような物言いだった。
「私達が時田さんをどう思うかは、関係ないです。……もちろん滝口くんにとやかく言われる必要もない」
息吹ちゃんの代わりに、私は勇気を出して答える。
声が震えていた。
滝口くんは、
「……は?」
と、私を見る。
「ごめん、あんた、誰?」
と、嫌味たっぷりに言ってくるから、私は声を震わせつつ名乗る。
(なんで、こんな怖いの)
事件に関わっているかもしれないと、思っているからかもしれない。
この美しい顔が、……美しすぎる故に、残酷に見えてしまう。
冷たくて。
残酷な、表情に。