真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

滝口くんの眉根が寄る。



「そしたら時田の奴、泣き喚いて怒って。自分こそが被害者だとか言い出した」

「どうしてですか?」



私にはわからない。




「俺、去年の三学期に、時田から告白されてたんだ。でも彼女が……、有沙が好きだからって断った」

「……っ!」

「二年生になって、時田は有沙をいじめ始めた。それを俺に隠すこともしなかった。俺が時田を責めたら、あいつはもっと有沙につらく当たった」

「先生に言わなかったんですか?」



思わず言ってしまった。

滝口くんは俯いて、
「言った。時田に注意もあったし、色々と対応はしてくれた」
と、言ってから、
「……でも、いじめは続いた」
と、呟いた。



「あの」
と、息吹ちゃん。



「屋上への扉の鍵は、一体誰が?」



その質問に滝口くんはつらそうに、
「俺」
と、答えた。



「最初は、有沙のこと励ますために先生達に内緒で持ち出した。屋上に行って、気分転換できたらって思ったんだ」

「……」

「でも、泣き喚いている時田が、その鍵を奪った」

「え?」

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