真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

滝口くんは説明してくれる。



「俺が持っていた鍵を奪って、有沙に一緒に来いって怒鳴った。俺は止めたけど、有沙は逆らえないって言って、時田と屋上に行った。逆らったら、もっとひどいことされるって。有沙が心配だったから、俺も一緒に行きたかったけれど、一緒に来たら有沙のことを殺すって時田が……」

「そこで、何があったのか知っているんですか?」
と、息吹ちゃん。



「有沙から聞いた。屋上のフェンスの向こうに時田が有沙を連れて行ったらしい」

「えっ!!」



私はまた少し大きな声を出してしまった。



「時田は有沙に、俺と別れろって言ったって。別れたらいじめもやめるし、突き落とさないって」

「……っ」

「有沙は泣いて、でも、断った」



滝口くんは私達を見つめた。



「『滝口くんと別れる未来なんて要らない』って」



滝口くんの目が潤んだ。



「時田の奴、わがままな子供みたいに泣き叫んで、有沙を突き落とそうとしたらしい。でも、有沙は……逃げたんだ」

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