真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

「……そう」
と、吉井さん。



「加瀬ちゃんが犯人じゃないって、あの時アピールしたでしょ?そしたら文芸部のあなた達は信じて、それを前提に動くと思った」

「……」

「加瀬ちゃんが犯人じゃないって、少しでも噂になったら……、少しでもそれを信じる人が多くなれば、いいと思った」



吉井さんは目頭をティッシュペーパーでおさえている。



「加瀬ちゃんへの疑惑が少しでも薄まれば、加瀬ちゃんを救えると思った。……警察に捕まる間まででいいから」



私は吉井さんと息吹ちゃんを交互に見る。

息吹ちゃんは怒ったふうでも、混乱しているふうでもなかった。

ただ。

悲しそうだった。



「誰でも良かったんだ。何かに発表して、嘘の噂を流してくれる人なら」
と言った吉井さんは、
「でも、あなた達のこと、みくびっていた」
と、後悔したように呟いた。



「あなた達を利用しようとして、ごめんなさい」

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