真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

息吹ちゃんの声は震えていた。



(息吹ちゃん……)



私はそっと、息吹ちゃんの背中をさする。



「あなたは、何もしなかったんじゃない」
と、吉井さんが息吹ちゃんを見る。



「加瀬ちゃんのことを信じてた。クラスの誰よりも」



そうだ。

息吹ちゃんは、信じていた。

そして疑惑が拭えない加瀬さんのことを思って、胸を痛めていた。

最後まで信じたいと願っていた。




「つらいことを頼んで、本当にごめんね。でも、ありがとう」



吉井さんは深く頭を下げた。








吉井さんが部室から出て行って、
「依頼は終了ってこと?」
と、寧々様が息吹ちゃんを見た。



「まぁ、依頼は、終わったよね?」
と、私も息吹ちゃんを見る。



「……うん。スッキリしないけどね」
と、息吹ちゃんがぼぅっとした表情で答えた。



息吹ちゃんが何を考えているのか、わかった。



市川さんのことだ。

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